昨年度に引き続き、ブラジルにおける現在の日本就労を目指すデカセギ者の募集活動状況を現地の日経旅行社・デカセギ旅行社への聞き取り調査を重ねた。今年度は、これまでの旅行社および県人会組織への聞き取り調査にとどまらず、サンパウロ領事館への聞き取り調査も行い国として外国人労働者の日本への流入に対してどのようなコントロールを行っているのかについても聞き取り調査を行った。 本研究を通して得られた知見は、筆者が委員を務めていた厚生労働省「研修・技能実習生制度研究会」において国境を越えて入ってくる労働者の適切な規制のあり方にも用いられ、平成20年度中に国会に上程される法改正にも寄与することができた。本研究の国への貢献はこれだけにとどまらず、経済産業省が行っているグレーター・ナゴヤ・イニシアティブにはブラジル人労働者の正社員モデル作りとして「国際的な人材活用:外国人労働者受け入れガイドブック」の作成に結実した。同じく委員を務めている国土交通省における第一回国土形成計画(全国計画)のための「社会経済研究会」での活動を通して、具体的な政策や政策基盤の基礎となる考え方も提供した。また、国以外にも日本経団連、日本商工会議所、経済同友会、そして日本貿易協会が共同で設立した日本経済調査協議会が「外国人労働者受け入れ政策の課題と方向」を打ち出すにあたって専門知識を提供するとともに、その執筆にも関わり研究成果が社会的に還元されるよう努めた。 もちろん、学術研究としても一本の査読論文、3本の依頼論文の他に3冊の図書が発行されている。さらに、学会報告等も含めると、本研究の研究成果は学術的にも積極的に公表することに努めた。今年度は、4年の研究期問のなかで、3年目に当たる年であり、1年目、2年目で収集したデータに基づいて研究成果を出すことができた。最終年次である来年度の研究成果数はさらに増える予定である。
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