研究課題/領域番号 |
18402040
|
研究機関 | 立命館アジア太平洋大学 |
研究代表者 |
石井 由香 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 准教授 (20319487)
|
研究分担者 |
関根 政美 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (20129498)
塩原 良和 東京外国語大学, 外国語学部, 准教授 (80411693)
浅川 晃広 名古屋大学院, 国際関係学研究科, 講師 (80402410)
|
キーワード | オーストラリア / アジア系 / 専門職移民 / 政治参加 / 社会参加 / 華人 |
研究概要 |
今年度は研究計画の最終年度であり、インフォーマントに対する追加インタビューおよび文献資料収集を、オーストラリアにおいて8〜9月に行った。この成果を元に考察を進めた結果、次の点があきらかになった。 インタビューの内容からは、当初想定した通り、オーストラリアにおけるアジア系専門職移民のオーストラリア社会へのバランスのよい「参加」の様相が確認された。企業・経済活動や自らのエスニック文化を保持するためのエスニック・アソシエーション活動といった社会参加にとどまらず、種々の政治参加から政治家、議員になる者が現れるなど公的領域(政治的領域)へと参加が拡大している。地域レベルのケース・スタディとして実施したチャイナ・タウン再開発の事例からも、こうした参加領域の拡大ははっきりと実証された。その際に、彼らの英語力、専門性といった文化・経済資源は、彼らのオーストラリア社会への参加を支える重要な要因となっている。 また、彼らが社会参加、政治参加において、オーストラリア社会に貢献できる存在としての主張を行う際に、英語力、専門性という観点からの貢献にとどまらず、「多文化主義」を支持する市民としての貢献といった主張を行っている点が注目される。ネオリベラリズムの時代における「多文化主義」の変容という政治・社会環境の下で、経済的に相対的に強い立場にある移民である彼らが、自身の文化的背景と関連して、ネオリベラリズムに即した「個人的」「生産的」な主張にとどまらない、多文化を尊重する市民としての動きを示していることは、今後のオーストラリアの多文化主義を考える上で新しい視点をもたらすものであり、マイグレーション研究においても、ミドルマン・マイノリティやディアスポラとしての存在とはまた異なる、新しい移民像を提示するものであるといえよう。
|