本年度は、本研究の全体構想-アジアに位置する発展途上国ベトナムの知的障害児福祉活動の展開過程において、知的障害児の地域生活支援に関わる具体的な活動プログラムを検討し、就学前と就学期における知的障害児とその家族の福祉ニーズの実態把握を試みること-、および研究実施計画に従って、次のように展開した。基礎的資料・文献の日本国内外での収集、および3つの都市部(ハノイ市、フエ市、ホーチミン市)に居住する知的障害児とその家族の福祉ニーズについて、質問紙に基づいた面接調査(調査D)を行った。なお、調査Dにおいては、対象児の発達診断を方法論として加えることで、対象児の障害、発達、生活の3領域からの実態把握を行った。また、当初予定していた機関・団体ヒアリング調査(調査C)・領域(3)就学期の知的障害児に対する福祉活動については、ハノイ市地域の団体に対象を限定して行った。 これらの調査から得られた研究成果としては、第1に、知的障害児に対する就学前からの支援、早期介入は首都ハノイとホーチミン市で行われているだけで、それらの都市でもすべての知的障害児を対象とした取り組みではないこと、第2に、障害児と親・保護者、家族を適切に支援していく上で、親の子ども理解を高めていくこと-子どもの障害や発達について、日々の療育・教育を通じて、その理解を求め、家庭での具体的な育児場面、生活場面(食事や排泄、遊びなど)での相談や支援を行うこと-が重要であること、が明らかになった。なお、研究代表者は、研究成果一部報告を、雑誌論文(『日本ベトナム障害児教育・福祉研究』第6号)に発表するとともに、中国・北京市で開催された「東アジアの自閉症児のための治療教育プログラム開発に関する国際共同研究セミナー」にて口頭報告を行った。
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