研究課題
本研究の目的は、小児がん等のターミナル期にある子どもの教育・看護・医療に関する情報を収集し、各専門家の連携を図りながら適切な教育的対応の在り方と教育カリキュラムについて、国際比較研究を行うことにある。日本には、約1000カ所の病院に併設又は病院内に学校教育が入り、我が国の病気の子どもに対する教育は歴史的にも世界で最も早くから発展してきた教育の分野であるが、小児がん等のターミナル期における子どもの教育内容・方法に関しては、医療等との連携の中でどのような対応をしていったらよいのか個々の教師に任されているのが現状である。トータルケアにおける教育の位置づけ、その内容等が大きな課題である。本研究は、ターミナル期にある子どもだけを対象に行うわけではなく、子どもが入院し、治療を受け、寛解(remission)状態になり、退院していくケースも含める。すなわち、治療の過程において結果として残念ながらターミナル期に移行するケースと、退院していくケースも含める。研究3年目は、オーストラリア、スウェーデン、アメリカ合衆国、ドイツ、イタリアの海外の協力者と連携を図りながら、日本の状況とあわせ、情報収集及び補助的な調査を行った。各国、各専門分野から医学、看護、教育の現状と展望について協議を行い、これらを報告書としてまとめた。成果の一端として、いわゆる病院-地域連携看護コーディネーターの役割が小児がんの子どものトータルケア、特に復学支援において重要であることが挙げられる。例えば、オーストラリアのシドニー小児病院で行われている復学支援(Back on Track)と、スウェーデンのQueen Slivia Children's Hospitalで行われている復学支援は、ターミナル期にある子どもも含め、我が国の小児がんの子どもの復学支援の一つのモデルになると考える。それは、病院内の教育的支援だけにとどまらず、治療中も含め、病院から家庭、学校への移行支援モデルとして支援組織が整えられていることである。すなわち、病院-地域連携看護コーディネーターがキーパーソンとなり、病院内における支援と家庭、学校等の地域における支援、福祉関係者等との連携を図りながら復学支援を行うモデルである。これらの組織的支援体制は日本にはまだみられず、今後、導入を図る上で参考となると考える。これらの内容を含め、小児がんを中心としたターミナル期にある子どもの教育内容・方法に関して報告書にまとめた。