研究概要 |
インドネシア中央カリマンタン州の熱帯泥炭地に設立した3地点のタワーサイト(未撹乱の自然林(SF),排水路によって地下水位の低下した自然林(KF),地下水位が低下した伐採跡地(土壌表層が火災によって焼失)(KB))において,渦相関法により,大気とそれらの陸上生態系との間のCO_2交換速度(CO_2フラックス)およびエネルギーフラックス(顕熱,潜熱)を連続観測するとともに,気象要素,土壌環境などの測定を行った。その結果,生態系による正味のCO_2固定量を表すNEPの年積算値は,SFサイトでほぼゼロ(カーボンニュートラル)か若干のマイナス,KFサイトでは-300〜500gCm^<-2>,KBサイトでは-700gCm^<-2>程度となった。これらの結果は,熱帯泥炭地では,大規模な環境撹乱を受けていなくても,CO_2の吸収源(シンク)として機能しておらず,地下水位の低下や,森林伐採,火災などの撹乱によって大きなCO_2放出源(ソース)となっていることを示している。また,補助金によって購入した水位計を排水路によって地下水位が低下したエリアに設置し,既存の測定点を含む地下水位観測網(ネットワーク)を構築した。得られたデータを用いて,ダムによる排水路塞き上げ効果の空間的評価にとりかかった。さらに,衛星リモートセンシングにより,熱帯泥炭林の広域蒸発散量の推定,森林の伐採跡地および火災跡地における植生の回復過程の評価などの解析を行っている。
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