研究分担者 |
谷 宏 北海道大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (80142701)
井上 京 北海道大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (30203235)
島田 沢彦 東京農業大学, 地域環境科学部, 准教授 (90349811)
山田 浩之 北海道大学, 大学院・農学研究院, 助教 (10374620)
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研究概要 |
インドネシア中央カリマンタン州の熱帯泥炭地に設立した3地点のタワーサイト(未撹乱の自然林(SF),排水路によって地下水位の低下した自然林(KF),地下水位が低下した伐採跡地(土壌表層が火災によって焼失)(KB))において,微気象学的方法(渦相関法)により,陸上生態系からのCO_2放出速度(生態系呼吸量,RE)を,また自動開閉式チャンバーシステムにより土壌からのCO_2放出速度(土壌呼吸量,RS)を連続観測するとともに,気象要素,土壌環境などの測定を行った。 その結果,RSには,地温と同様の明瞭な日変化が認められた。地温とRSの関係(指数関数)を用いて温度の影響を除いても,昼間に上昇するはっきりとした日変化が認められた。このような日変化は大気CO_2濃度の変化では説明できず,主に樹木の代謝機能(光合成など)に関連した根呼吸の日変化に起因したものであると考えられる。未撹乱の森林(SF)では,地下水位(WL)がある値を上回るとRSが急激に低下した。このことは,WLの上昇により表層土壌が飽和して嫌気条件になり,土壌有機物の分解および根呼吸が低下することを示している。WLの閾値は,ハンモックでは0.1m,ホローでは-0.2mであり,この差は両微地形の標高の違いに相当する。一方,排水された森林(KF)では,乾季にWLの低下が著しい。SFのような高水位でのRSの明瞭な低下はみられなかったが,WLが-0.7mを下回るとRSが上昇する傾向が認められた。これは,土壌下層が不飽和になり,好気的な環境にさらされたことで泥炭の分解が促進されたことを意味している。同様の結果がREについても認められた。以上より,未撹乱の熱帯泥炭地では,SRは地表面付近のWLの変動によって大きな影響を受けること,またWLが-0.7m程度まで低下すると泥炭の分解が促進されることが明らかとなった。
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