炭素14年代から暦年代を推定するために、過去の大気中の炭素14濃度の変動を精度よく調べる必要がある。過去の大気中の二酸化炭素の炭素14濃度の変化は複数アプローチで調べられている。その中で1つのアプローチは、堆積過程の季節変化が乱されることなく記録されている堆積物(以後、「年縞堆積物」という。)の年縞計測数と植物遺体の炭素14年代を比較することである。 本研究では、過去5万年(炭素14年代測定法の測定の限界)の炭素14濃度の詳細な変化を調べるうえで「カギ」となる年縞堆積物試料の採集が期待できる中国東北部の火口湖(中国語では、「天池」という。)に着目した。具体的には、中国東北部の火口湖堆積した年縞堆積物の不撹乱柱状試料の採集候補地の策定するため、中国黒龍江省五大連池市南挌拉球山、内モンゴル自治区阿尓山地区の阿尓山の山頂火山湖の野外調査、不かく乱堆積物コアの採集方法の検討、火口湖堆積物の試験的な採集を中国の大学・研究機関の研究者グループ・現地行政機関と共同で行なった。また、得られた年縞堆積物の年縞編年の構築及びその堆積物に含まれる陸上植物遺体の炭素14濃度測定を正確に高精度で行なうための基礎実験を実施してきた。 本研究での野外調査及び試験的な堆積物試料の採集の結果、中国黒龍江省五大連池市南挌拉球山、内モンゴル自治区阿尓山地区の阿尓山の山頂火山湖(中国語では、「天池」。)が、本目的を達成するうえで有効な地点と結論した。また、天池の環境保全を考慮した試料採集に関わる問題点、その対応策が明確になった。
|