今年度内で実施した調査内容は以下の通りである。1)三峡ダム貯水池地域における樹坪地すべりの観測システムの完成及び観測の継続;2)同地域における千将坪地すべりのすべり面土試料のリングせん断試験;(3)中国地質調査局と合同で、防災ネットワーク構築。 研究成果としては、以下の通りである。1)樹坪地すべりに長期にわたる地表変動観測によって、地すべりの動きはダム貯水池の水位低下及び降雨によって活発になり、貯水池の水位管理に厳重な注意が必要との結論に至った。(2)千将坪地すべりから採取したすべり面土のリングせん断試験、X線回折解析によって、当地すべりの発生・運動機構が解析された。再活動地すべりでありながら、地すべり運動時、既存のすべり面周辺の土を取り込みながら、高速運動になることを示唆した。この結論は従来の“再活動地すべりは高速運動しない"のような定論を反対し、すべり面も拡張するといったダイナミック的な発想を提案した。この結論によって、高速運動地すべりを判定する際に、より詳細な調査・解析が必要となる。(3)三峡ダム貯水池地域において、中国地質調査局宜昌地質研究所がリードシップを取って、樹坪地すべりに構築されている観測システムに基づいて、地すべりにおける詳細な地表踏査と共に、当地域における地すべり発生・運動範囲の予測を実施し、地方政府、中央政府、揚子江流域管理当局などと連携し、地域防災ネットワークを構築している。
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