研究概要 |
2004年12月26日に発生したスマトラ地震は,グローバルな観測網が整備されて初めてのM9級の地震である.この地震による余効変動は,大きくさらに長期間継続することが予想されるため,タイ・ミャンマーなどの地域においてGPS連続観測を実施している. 平成18年度は,タイ国内の観測点の充実を図り,インドシナ半島内の安定した地塊に基準点を設けるべく,チュラロンコン大学の協力を得,10月にタイ北東部のピマーイ観測所に最新鋭のGPS受信機を設置し,1秒サンブリングで観測を行っている.さらに,以前の日・タイの共同プロジェクトにより設置されたタイ北部のシサムロン観測点の移設および機器交換をいった.並行して,ミャンマーやタイ国内の他の観測点のデータを回収し,これらをグローバルな観測網のデータと統合して解析している.これまでのところ,地震前の2004年12月5日から2006年7月までのデータの解析を終了している.その結果, 1)地震後の余効変動は,約1年半の期間で,本震時の変位と同程度の大きさになっている.すなわち,プーケット(PHKT)は地震後580日間に約25cm南西に,バンコク(BNKK)は南西に9cm弱移動していることが明らかになった.しかし,ミャンマーのヤンゴンなどには顕著な変動が認められない. 2)2006年に入って,タイ国内の変位が西向きになっている.2006年夏のこの地域の多雨の影響も考えられる. 3)これらの変位からYabuki & Matsu'ura(l992)の方法により,プレート境界面上の余効すべり分布を推定したところ,ニアス地震まではアンダマン諸島とスマトラ島の間の海域に大きなすべりが得られた.ニアス地震後この地震の余効すべりが顕著となり,アンダマン諸島下のすべりは減衰した.しかし,2006年になって,ニアス地震の余効すべりは急速に減衰し,アンダマン諸島下のすべりのみが継続する様子が認められることを示した. 4)地震後に解放されたモーメントは1.58×10^<22>Nm, Mw8.73と推定される. などの結果を得ている.これらの成果を,アメリカ地球物理学連合秋季大会や防災研究所研究発表講演会などで発表した.
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