研究概要 |
1.野外調査結果 環北太平洋の白亜系からは,日本と米国カリフォルニア州からメタン湧水依存型化学合成化石群集が報告されていたが,両地域は地理的に大きく隔てられていた.今回,米国アラスカ州南部のTalkeetna山地Alfred Creekに分布する上部白亜系(Campanian)を調査レたところ,炭素安定同位体比の著しく低い炭酸塩岩によって構成されるメタン湧水堆積物とスナモグリーキヌタレガイーツキガイから構成されるメタン湧水依存型化学合成群集を発見した.このことから,白亜紀の環北太平洋には広くメタン湧水とメタン湧水依存型化学合成群集が分布していたことが明らかになった. 2.室内研究成果 平成19年度までの第一次調査と今年度の野外地質調査結果と採集した化石試料の解析の結果に基づき、北太平域で初めて北カルフォルニア州の下部-中部白亜系の総合年代・古地磁気層序を確立した。この成果は、主要分担者共著で現在国際誌に投稿中である。また、北太平洋域の海成白亜系に特徴的に発達するメタン冷湧水起源石灰岩の形成過程とそれに伴われる化学合成群集の古生物学的特徴をまとめ、The Island Arc、Acta Palaeontologica Polonicaに公表した。また、平成19年度の調査でカルフォルニア州北部の下部白亜系(Barremian)の冷湧水性炭酸塩岩周辺から産した大型二枚貝について分類学的検討を行ったところ、グリーンランドの同時代の冷湧水性石灰岩から報告のある化学合成二枚貝Caspiconchaに比較されることが判明し、化学合成二枚貝群集の起源や地理的分布を明らかにする上で重要な知見が得られた。詳細は、現在投稿準備中である。このほか、北米太平洋岸のカルフォルニア州北部の下部白亜系(Albian)から産した厚歯二枚貝、およびバンクーバー島ならびに北海道の上部白亜系(Santonian-Campanian)から産した大型鞘形類八腕目2新属3新種の顎器を、それぞれCretaceous Research, Journal ofPaleontologyに記載報告した。
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