研究課題/領域番号 |
18404001
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
冨安 卓滋 鹿児島大学, 理学部, 助教授 (60217552)
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研究分担者 |
松山 明人 国立水俣病総合研究センター, 疫学研究部, リスク評価室長 (00393463)
井村 隆介 鹿児島大学, 理学部, 助教授 (40284864)
宮本 旬子 鹿児島大学, 理学部, 助教授 (40244222)
大木 公彦 鹿児島大学, 総合研究博物館, 教授 (90041235)
穴澤 活郎 鹿児島大学, 理学部, 助教授 (90325762)
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キーワード | 水銀 / 動揺 / 環境影響 / 水銀鉱山 / スロベニア |
研究概要 |
本年度の調査は、10月3日10月11日に行われた。3日に研究協力者ミレナホルバット博士(ヨゼフステファン研究所)とこれまでの研究結果をふまえて検討会を行い、それに基づき、イドリヤ旧水銀鉱山地域中央を流れるイドリヤ川沿いに土壌、底質および河川水を採取した。土壌試料は、鉱山上流と鉱山下流の二地点において、それぞれ川岸から森林部に向けて数十メートル間隔に3-4点柱状採泥器で採取した。採取した土壌は、断面を観察した後、層ごとに切り分けチャック付きビニール袋にいれて日本へ持ち帰った。土壌試料中の総水銀濃度を測定したところ、上流部においては、水銀濃度はかなり低くなるものの、表層部分において、高い水銀濃度を示す傾向が見られた。河川による運搬は考えられず、主に大気により輸送された水銀が沈降したと考えられる。また、その大気中水銀の固定に対して植物の関与も考えられるため、今後周辺植物中の水銀を詳細に調査する必要がある。メチル水銀濃度は、河川沿岸に比べて森林土壌中で高い傾向があり、落葉による有機物の供給なども考慮する必要がある。XRFを用いた土壌成分分析結果は、森林土壌ではケイ素の含有量が高く、河川部ではカルシウム、マグネシウムの含有量が高かった。上流部と下流部を比較するとケイ素含有量は上流部で高く、下流部では減少する傾向が見られた。これらの結果と水銀濃度分布を総合的に考察することで水銀鉱山周辺への水銀の拡散にっいての評価が可能になる。また、河川水と底質を遠沈管に採取し、その水相中の水銀濃度及び化学形変化を追跡した。総水銀濃度は、日々上昇する傾向が見られ、底質からの溶出が示唆されている。一方で、化学形別に見ると、水銀イオン濃度は低下し、原子状水銀濃度は、一度上昇した後に低下した。メチル水銀濃度は、初めの二日はほとんど変化しなかったが、3日目以降に急激な上昇が見られ最終日には初濃度の約100倍の値を示した。今後水相の酸化還元電位、電気伝導度変化などと合わせて追跡することでメチル化の機構に対する知見も得られると期待できる。
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