今年度は、昨年度に引き続いて米国におけるコミュニティ・ランド・トラストの活動の事例調査を行い、コミュニティによる土地の共同所有・管理を推進する仕組み、制度的課題等について整理するとともに、昨年度の成果とあわせて、米国におけるコミュニティ・ランド・トラストの全体像を体系的に把握し、様々なトラスト活動との相互関連による新たな公共性の萌芽について分析を行った。 米国においてはコミュニティ・ランド・トラスト活動と自然環境の保全を目的としたランド・トラスト活動とはその源流が異なり、別の流れを持って活動してきた。自然環境の保全を目的としたランド・トラスト活動は、郊外部における広大な土地を市場から分離させて保存してきたが、土地を閉じこめてしまう傾向があった。一方で、コミュニティ・ランド・トラストはハウジングコストの対処法として編み出され、市街地の土地を数多く扱い、土地の利活用に重点を置いてきたと言える。 近年になってこのような状況に変化が見られることが明らかとなった。第一に、政府による土地政策の転換によって多くのランド・トラスト活動において多角的に財源を確保していくことが必要となり、土地を活用していくことで収益を上げていくような動きが起こりつつあることである。第二に、自然環境の保全を目的としたランド・トラストにおいても市街地におけるオープンスペースの保全によるコミュニティの活性化に取り組む団体が生まれてきていることも新たな動きである。 近年、特に市街地におけるオープンスペースを活用したコミュニティの活性化の取り組みにおいて、自然環境の保全を目的としたランド・トラスト活動と、コミュニティ・ランド・トラスト活動との連携の動きが見られる。このような動きは未だ萌芽段階であるが、土地を根拠とする両者が相互に連携を図っていくことで、多くの市民の社会貢献を獲得していくことが期待される。
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