研究概要 |
本研究課題の最終年度に当たる平成20年度においては、前年度までの調査をふまえて、当該地域に残存する歴史的建築物の重点的調査をそれぞれ実施した。 トルコ共和国における調査は、平成20年6月7日〜6月17日に実施され、トルコ共和国東部に位置ずるエルズルム、カルス両都市とその周辺を対象地域として、全5棟(Haho,Ishan,Cengelli Kilisesi,Havariler Kilisesi,Penek Kilisesi)の遺構を対象とした。具体的には、主たる作業である写真撮影、ビデオ撮影等の現状記録作業のほか、Havariler Kilisesi, Cengelli Kilisesiの各遺構では写真測量と常時微動の測定を中心とした、歴史的遺構とその立地に関する振動特性データの採取を行った。各遺構の詳細なデータを得た。また、アルメニア共和国においても、平成20年11月8日〜11月23日にかけて調査を実施し、とくにグルジア建築との関連を指摘されるAkhtalaの遺構について、写真測量をはじめとする現状記録作業を行った。 上記の現地調査から、既往の研究でも充分明らかにされていない当該地域における遺構の状況を把握できた。実測データに基づき、平面図及び写真測量による立面図を作成したほか、アナトリア地域におけるイスラームの墓廟建築に関する建築形態・建築意匠の特質、同地域およびカフカース地域におけるキリスト教建築のドーム部架構構成の特質について、一定の仮説を提起することができた。さらに、調査対象遺構が有する振動特性を把握した。 なお、上記の調査成果は、日本建築学会の平成20年度関東支部研究報告集に報告されている。また、11月1日にはトルコ側研究者を交えたシンポジウムを開催し、3年間に及ぶ調査研究の成果の一部を対外的に公開した。
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