建築家ガブリエルが、宮廷が地方支配を強化する18世紀という状況のなかで、一種の官製様式である古典主義をいかに広めたかを知ることを研究の目的として今年度の調査・研究を行った。その結果、申請書における研究実施計画に対応して次の事実を明らかにし、成果をあげた。 1) ボルドー、レンヌ、ディジョンの3都市の比較から、宮廷に従順であったブルゴーニュ州ディジヨンでは都市と宮廷間では軋轢はなかったこと、宮廷にとってはある意味で反対勢力であったボルドー、レンヌでは、建設されるべき建物の優順などで葛藤があって、ガブリエルは調停役を果たした 2) ディジョン市では17世紀からの連続的な公共施設建設の文脈にガブリエルが適合した。 3) 宮廷と地方の関係において、建設費提供などの優遇措置に、地域差があった。 4) ラ・ロシェル市の大聖堂建設にガブリエルが貢献し、古典様式を広めた。 5) ガブリエルは、政治的にまた建築様式的に、中央と地方の調停者であった。とくに地方建築家は古典主義様式について統一した概念がなく、彼はある程度様式を統制したとはいえ、最終的にはその反省に立ってアカデミーにおいて統一的様式を定式化した。
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