研究課題
大木が豪州Monash大学に約1週間滞在し、褐炭改質廃水に関する調査を実施した。同大学の研究者らと、褐炭利用廃水の水環境、生物に対する影響や、MTE(Mechanical Thermal Expression)廃水中に含まれる種々の物質の分析について研究討議を行った。また、現地で種々の条件下のMTE廃水をサンプリングし、鹿児島大学にて生態毒性試験とAmes変異原性試験を実施した。生態毒性試験では、MTE廃水が350℃でのHTT(水熱処理)廃水に匹敵する毒性を示したが、これは廃水中に含まれる有機物のみの毒性ではなく、銅イオンの毒性もかなり寄与している可能性が示唆された。変異原性試験においては、MTE廃水およびHTT廃水ともに変異原性は見られなかったが、これらの廃水を塩素処理すると顕著な変異原性が発現することがわかった。三浦、菅原、二宮、中川、蘆田が豪州において現地調査および海外共同研究者との討論を実施した。現地調査では、西オーストラリア州にあるCollie炭鉱を訪れ、同地域の盛んな鉱物産業を支えるエネルギー源あるいは還元剤の供給源である亜瀝青炭の広大な採掘現場を視察した。冶金プロセス用コークス代替用や輸出を視野に入れた低品位炭の改質として、低品位炭のチャー化が実施されていた。また、ヴィクトリア州Latrobe炭鉱に隣接して建設され、試験運転中のMTEのパイロットプラントを見学した。同プラントは、15トン/時の処理能力を有しており、未粉砕の石炭と予熱された水(スチーム)のスラリーで供給され、機械圧によって脱水された後、石炭の含水率は30〜38%(wet basis)となることが実証されていた。次の段階として200トン/時の実機プラントが計画されているが、ラボスケールでは見られなかった圧力解放後の脆弱性が確認されており、廃水の性状も含め検討されなければならない課題は残されている。