研究課題
本研究は、韓国・中国の研究者とともに東アジア各国の沿岸域において環境ホルモン汚染の実態調査を行い、これら地域域における環境ホルモン汚染の有無を明らかにすることを目的とする。また、雌性ホルモン作用を持つ化学物質による汚染の状況と、これらの物質が魚類の生殖腺発達に及ぼす影響についても解明する。さらに、これらの地域の研究者とともに国際会議を開催し、研究成果の公表を行うとともに、共同研究の推進および研究者交流を目的とした研究者ネットワークを構築するとともに、次世代を担う若手研究者の養成を目指す。我々は、平成20年度に中国を中心とした同一魚種、同一手法、同一評価基準による調査および分析を行い、汚染の実態の解明を進めた結果、以下の成果を得た。1)中国沿岸における環境ホルモン汚染の実態調査:中国上海周辺でボラ採集し、生殖腺の組織学的観察を行うともに、血中ビテロジェニン濃度の測定を行った。その結果、この地域から捕獲したボラにおいて、高濃度のビテロジェニンが検出された。これにより韓国沿岸域でも、我が国と同様に雌性ホルモン作用をもつ環境ホルモン汚染が起きている事がわかった。2)日本国内の調査地点(長崎港、博多港、大牟田川河口)では、ビテロジェニンの異常値を示す個体が検出されなかった。昨年までは異常個体が確認されていたことから、環境が改善されている可能性がある。しかし、今後の経過観察が必要である。2)日中韓の研究者とのシンポジウムの開催:共同で進めている環境ホルモン汚染の実態調査の研究結果の公表および若手研究者の交流を目的としたシンポジウムを9月に韓国済州大学校で開催した。参加大学は、我々長崎大学の他、琉球大学、北海道大学、韓国済州大学、釜慶大学、江陵大学、上海海洋大学など。多くの大学院生間の交流が進み、これをきっかけとして上海海洋大学の学生が、平成21年度に日本に留学することが決まった。
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International Journal of Ichthyology (CYBIUM) 32
ページ: 234
ページ: 253-254