研究課題
基盤研究(B)
深海熱水噴出域に固有のProvannidae科大型巻貝類において、炭酸固定系を異にする細菌との共生が、巻貝の空間的住み分けを生じさせ、種分化を促進しているという仮説の検証を目的に、平成18年9月8日から10月4日の間、「しんかい6500」による熱水噴出域の生態系調査をおこなった。90年代の調査時とは熱水噴出の様式や生物相に変化が観察され、アルビンガイ類の種組成にもそれに対応した変化が見られた。南太平洋のアルビンガイ集団は他海域(マリアナトラフ、インド洋)の集団に見られた様な過去の急激な集団拡大が検出されず、比較的長期間に渡り集団サイズが安定に保たれていた事が示唆された。巻貝類の生息場所から採取した海水の化学分析からアルビンガイ類が10-20℃の硫化水素濃度の比較的高い熱水混合域に生息するのに対し、ヨモツヘグイニナの生息域は4-8℃で、硫化水素濃度は検出限界以下である事が示された。2種のアルビンガイ類が混在するサイトが巨大なチムニーを伴う熱水噴出域であるのに対し、イプシロンプロテオバクテリアと共生する種のみが棲息するサイトは全て海底面の割れ目から熱水が湧出する熱水域であった。アルビンガイの棲息環境から採集した海水中微生物の群集解析から、全てのサイトで還元的TCA回路型の独立栄養細菌に近縁なイプシロンプロテオバクテリアが優占している事が示されたが、ガンマロテオバクテリアと共生する種のみが生息するビエナウッズサイトからのみ、その細胞内共生細菌に近縁な細菌が検出された。ガンマロテオバクテリアと共生する種が熱水噴出のテクトニックな背景や熱水の物理化学的性質よりも、噴出様式によって分布が制約されており、生息環境の生物物理化学的因子の変化に敏感であるのに対し、イプシロンプロテオバクテリアと共生する種はより幅広い生物物理化学的因子に適応していると考えられる。
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Zoologica Scripta 37
ページ: 1-21
Tokai University Press
ページ: 487
Museum national d''Histoire Naturelle (in press) (publication determined)