研究課題
本年度はビクトリア湖で野外調査を行い、これらのサンプルの遺伝子解析を行った。ビクトリア湖の調査ではビクトリア湖と、隣接する直径600m足らずの小さなマリンベ湖、ビクトリア湖に流入するニャシシ川とその河口を重点においた。ニャシシ川はビクトリア湖からわずか数キロメートルしか離れていないにもかかわらず、シクリッドは2種でそのうち1種がビクトリア湖の種の祖先系に近い形態をしていることが推測された。しかもこの種はわずか1種であるが遺伝的多様性はビクトリア湖の多くの種を合わせたほど大きいことがオプシン遺伝子の解析により明らかになってきた。ニャシシ川に生息するもう1種は、系統的にビクトリア湖の種とは異なっていることがSINEを用いた系統解析で明らかになった。先述したようにニャシシ川はビクトリア湖からわずか数キロメートルしか離れていないが、この種はビクトリア湖では全く採集されたことがなかった。そのため、この種はビクトリア湖内に侵入しても適応して定着することができていないことが予測された。これらのことからこれらニャシシ川の2種を比較して解析することにより、湖での適応と種分化に重要な形質と遺伝的背景が明らかになるのではないかと期待される。また、ニャシシ川河口の調査では昨年度に報告したマリンベ湖で発見された新しい種の祖先にあたると考えられる集団が採取された。オプシン遺伝子の解析からもこれらの集団がマリンベ湖の種の祖先になった可能性が高いことが見いだされた。
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