研究課題
本研究では、動物の生態と感覚機能の関連を解明することをめざし、翅の紫外線反射の強い日本産モンシロチョウと反射の弱い欧州産モンシロチョウの配偶行動と視覚機能の関連をさぐる実験的研究を行っている。平成18年度は以下の項目について調べた。1)複眼蛍光の測定:モンシロチョウの日本産亜種のオス複眼には、420nmの光で励起される蛍光物質を含む個眼が散在する。この蛍光物質は紫受容細胞をオス特異的な二峰性青受容細胞に変換するフィルター効果をもつ。欧州産亜種のオスにもおなじ蛍光があるかどうかを、蛍光顕微鏡を用いて調べた。結果、欧州産亜種にも蛍光個眼が存在することが分かった。ただ、蛍光顕微鏡ではきわめて狭い領域からしか蛍光を記録できない。より広い領域から同時に詳細な情報を得るため、テレスコープ光学系を応用した蛍光顕微鏡を試作した。2)配偶行動の解析:日本産亜種について、配偶行動と紫外線強度の関連を探る行動実験を行った。まず日向と日陰で紫外線含有量を比較したところ、日陰のほうが相対的に紫外線を多く含むことがわかった。そこで日向と日陰で配偶行動を比較した。その結果、オスは日陰においたメスをより高確率で選択した。従って、雄の配偶者認知のための視覚機構は、紫外線相対強度が高いメスの翅色に同調しているらしい。さらに、紫外線遮断シートと紫外線透過シートで覆った2区域でオスの配偶行動を比較した。紫外線透過区域では、オスはより長時間、メス探索行動を続け、高確率で交尾した。光環境中の紫外線がオスの配偶行動(メス探索と交尾)を促進するらしい。3)色覚行動の解析:日本産亜種に色覚があるかどうかを調べるため、色紙と蜜を組み合わた実験系を開発した。予備実験の結果、求蜜中のモンシロチョウにも、アゲハ類と同様、色覚があることが示唆された。
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