研究課題/領域番号 |
18405015
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
玉手 英利 山形大学, 理学部, 教授 (90163675)
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研究分担者 |
半澤 直人 山形大学, 理学部, 教授 (40292411)
リチャード W.J. 山形大学, 理学部, 准教授 (90260455)
鈴木 英勝 石巻専修大学, 理工学部, 助教 (80306068)
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キーワード | 生物多様性 / 異所的種分化 / パラオ共和国 / 海水湖 / 浮遊性カイアシ類 / 遺伝的分化 / 群集構造 |
研究概要 |
熱帯域の海水湖が、海洋生物の異所的分化を促進する「種形成の揺籃」となる可能性を検証するために、パラオ共和国において、2008年11月20日から27日まで海洋生物の生物多様性に関する第3次現地調査を行った。昨年度に続き、海水湖および沿岸域での動物プランクトン等の種組成、種多様性を調査した。また、カラヌス目カイアシ類を対象にして、海水湖集団の集団遺伝学的解析を行った。前年度までの調査地点に新たに海水湖1地点、沿岸域4地点を加えて、生物試料と水質調査を行った。生物試料は現地でアルコール固定をした後に、研究室に持ち帰った。ミトコンドリアDNA、リボソームRNA遺伝子を分子マーカーとして、分子系統解析を行い、海水湖間および海水湖と外海(礁湖)間の遺伝的分化の程度を定量化した。遊泳性の異なる2種のカラヌス目カイアシ類Acartia bispinosaとUndinula vulgarisのミトコンドリアDNA cytochrome oxidase subunit I (COI)を増幅する特異的プライマーを新たに設計し、約710bpsの部分塩基配列を決定した。得られたハプロタイプについて統計的最節約ネットワークを作成した。その結果、A. bispinosaではハプロタイプ多様度が比較的に低く、海水湖集団間で共通のハプロタイプが存在せず、集団間での遺伝子の交流がないことが示唆された。一方、U. vulgarisではハプロタイプ多様度が高く、海水湖集団間で共通のハプロタイプがみられた。以上から、U. vulgarisはA. bispinosaに比べて集団間の分化が低いことが示された。この結果から、海水湖では、移動能力が高く生息環境を選択できる種の遺伝的分化がより速く生じていることが明らかになった。今年度の研究結果の一部は国際カイアシ類学会(2008年7月、パタヤ市)で発表した。
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