研究課題/領域番号 |
18405015
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
玉手 英利 山形大学, 理学部, 教授 (90163675)
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研究分担者 |
半澤 直人 山形大学, 理学部, 教授 (40292411)
リチャード W.J. 山形大学, 理学部, 准教授 (90260455)
鈴木 英勝 石巻専修大学, 理工学部, 助教 (80306068)
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キーワード | 生物多様性 / 異所的種分化 / パラオ共和国 / 海水湖 / 浮遊性カイアシ類 / 遺伝的分化 / 魚類 / 二枚貝類 |
研究概要 |
熱帯域の海水湖が、海洋生物の異所的分化を促進する「種形成の揺籃」となる可能性を検証するために、パラオ共和国において、2008年11月から12月まで海洋生物の生物多様性に関する第4次現地調査を行った。昨年度に続き、海水湖および沿岸域で種多様性と遺伝的多様性を調査した。浮遊動物としてカラヌス目カイアシ類、遊泳動物として科魚類Sphaeramia orbicularis、底生動物としてイガイ科貝類、を対象にした。カイアシ類の調査では、海水湖16地点、ラグーンと外海8地点でサンプリングを行い、多次元尺度法を用いて種組成を類型化した。その結果、部分循環型海水湖、水深の浅い完循環型海水湖、水深の深い完循環型海水湖で種組成が有意に異なり、多様性は部分循環型海水湖がより低かった。外海との交流の程度と嫌気層の有無がそれぞれの湖の種組成に影響を及ぼすことが示唆された。S.orbicularisの調査では、完循環型海水湖3地点と外海3地点の各集団でミトコンドリアDNA調節領域部分配列を決定し、集団遺伝学的解析を行った。その結果、海水湖集団では過去1万年の間ボトルネックが繰り返し生じており、集団間の遺伝的分化の程度が高いことが示された。イガイ科貝類の調査では、海水湖のイガイは形態学的には3タイプに分かれるが、ミトコンドリDNAでは大きく2系統に分かれ、一方はBrachidontes-Hormomya species complexであることが示された。また、2か所の完循環型海水湖では対象種の形態が、他の完循環型海水湖と大きく異なるが、遺伝的分化は少ないことが示された。以上の結果は、パラオの海水湖が、海洋生物の固有進化につながる遺伝的分化や形態的変化をもたらす場であることを実証し、海水湖が「種分化の揺籃」であることを示唆するものである。今年度の研究結果の一部は、Gene and Genetic SystemsおよびHydrobiologicaで論文発表した。
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