研究概要 |
アメリカ南部および北西部のアメリカシロヒトリの個体群を採集し、人工照明、恒温条件で飼育し、発育速度、発育零点、発育必要積算温量、休眠調節における光周性、高温耐性、さまざまな低温処理後の休眠深度の変化、羽化リズムを調べた。赤頭型と黒頭型の実験個体群を確立し、これらの交雑実験を行った。実験室内の条件では両"種"は比較的容易に交尾するが、子世代でオスと雌の比、及びオスと雌の蛹期間が著しく偏り、野外では生活史形質の差や行動の分化と合わせ、両者の自由な交雑は妨げらていると考えられた。したがって、両者は、別種と考えられた。現在、これらの個体群のミトコンドリアDNAによる、分化程度を調査中である。黒頭型は、ルイジアナ州バトンルージュのもので、この個体群のオスは斑点を持つ上翅を持つものが多く、幼虫の頭殻の色と合わせて、北西部の個体群との交雑実験によって、斑紋や頭殻の色、体色の遺伝子支配、休眠深度の遺伝子支配、幼虫の行動や、吐糸量の遺伝子支配が明らかにされるだろう。北西部の個体群を野外で採集したが、カスケード山脈をはさんで、幼虫の頭殻の色に大きな違いが確認された。北西部の個体群内の変異性についてさらに詳細な調査を計画中である。黒頭型の幼虫は南部産にもかかわらず、高温には弱く、31,5度より高い温度では発育しないし、卵の艀化率も30度以上では低くなる。 日本における、黒頭型の個体群における化性の分化は進行中で、福井、金沢近辺の移行地帯における、年代別の定点観測の結果、臨界日長のシフトが見られ、これは気候の温暖化とパラレルに進行している。
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