研究課題/領域番号 |
18405031
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福田 晋 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (40183925)
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研究分担者 |
伊東 正一 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (30222425)
南石 晃明 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (40355467)
吉田 泰治 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (80158451)
堀田 和彦 九州大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (00192740)
矢部 光保 九州大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (20356299)
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キーワード | 東アジア / WTO / EPA / FTA / 地域内貿易 / 産業クラスター |
研究概要 |
本年度は、分担ごとに研究課題の補完を行ない、なおかつ日本の輸出実態と輸出先国の食料流通・消費の特徴についても研究を深めた。得られた研究成果は、以下の通りである。 1.2008年9月に発生したいわゆる「粉ミルク問題」を契機に、牛乳の安全性に疑問をもつ消費者の割合の増加、牛乳購入時の頻度・量の減少の傾向が見られた。また、食品安全法の整備など国を挙げた食品安全管理体制づくりが進みつつあることも確認された。「粉ミルク問題」は、今後の中国における食料の安全確保の転機となる可能性が示唆された。 2.韓米FTAが韓国の牛肉市揚および豚肉市揚に与える影響について計量的に分析した結果、韓米FTAによる影響は,相対的に牛肉のほうが大きく,結果として牛肉生産者が大きな被害を受けることとなる.したがって,牛肉生産農家に対して優先的に支援対策を行う必要があることが明らかとなった. 3.アジアにおける食料消費パターンと消費者のコメ購入意識・行動との関連性を分析した結果、(1)食料消費パターンは台湾、日本の脂質多投・米低依存型とタイ、ベトナムの炭水化物多投・米依存型に分類できる。(2)脂質多投・米低依存型の国では消費者のコメ購入における節約的意識の低下と多様な価値観の形成、品種や香りを通じて美味しい米を志向する消費者層が識別された。 4.長期的に見て日本の重要な輸出先となる中国・上海の流通システムの変化を分析し、(1)食品安全性を意識した「緑色卸売市揚」と「緑色小売市場」の基準を策定し、その再編過程として地方政府が「標準化卸売市場」と「標準化菜市揚」を設置している。(2)この再編において、食品入場検査と情報履歴の記録が共通点となっており、食品の情報履歴システムが構築され始めている。5.中国酪農の主産地である内モンゴルの生産構造と流通システムの分析から、(1)零細な酪農家は搾乳施設を持たず、牛を移動させて搾乳する「搾乳ステーション」が急速に普及している。(2)酪農家の生乳取引形態は5分類できるが、合作社乳牛養殖小区と大規模酪農団地は大規模乳牛メーカーと契約しており、全体の約半数を占める。(3)大規模乳業メーカーの寡占化が強まり、搾乳ステーションを設立してインテグレートするケースが増えているが、個人の搾乳ステーションも設立されており、今後も搾乳ステーションが生乳流通システム発展の重要なポイントとなると考えられる。
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