本年度は、中国における単為生殖型肝蛭の分布を明らかにするため、平成19年10月から11月にかけて広東省広州市、湖北省武漢市、雲南省昆明市、青海省西寧市の屠畜場で肝蛭に感染した水牛および黄牛の肝臓より肝蛭虫体を回収し、70%エタノールにて圧平固定、染色体観察用処理を施すとともに子宮内虫卵を回収し日本に持ち帰った。圧平固定虫体については、写真撮影した後、一部を切除してゲノムDNAを抽出し、残った頭部部分はカーミン染色を施して貯精嚢内の精子の有無を観察した。その結果、広州市の水牛より得た虫体は全て貯精嚢内に多数の精子が観察され、しかも2倍体であり、虫体の外部形態、体長・体幅の比、さらに核rDNAのITS1(internal transcribedspacer1)遺伝子型からF.giganticaであることが明らかになった。西寧のウシまたはヤクより得た肝蛭虫体は同様の解析から、F.hepaticaであると考えられた。一方、武漢市および昆明市のウシから回収された虫体には、F.gigantica虫体とともに、虫体の貯精嚢内に精子が全くみられないか、あるいは未熟な精原細胞と考えられる細胞が少数観察されたことから単為生殖型肝蛭であると考えられた。さらに染色体観察から2倍体および3倍体が確認され、またITS1遺伝子型はFg型とともにFh/Fgのへテロ遺伝子型が確認された。現在、これらの肝蛭虫体のミトコンドリアDNA遺伝子型について解析中で虫体間の系統解析を行っている。さらに、虫卵より孵化させたミラシジウムをヒメモノアラガイに感染させて得たF.hepaticaとF.giganticaのメタセルカリアをヤギに混合感染させ、両種の雑種形成について解析している。
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