中国における単為生殖型肝蛭の分布を明らかにするため、本年度は、平成20年8月〜9月、11月に山東省済南市、遼寧省瀋陽市、吉林省長春市の屠畜場で肝蛭に感染した黄牛の肝臓より肝蛭虫体の回収を試みたが、済南市および瀋陽市では回収できなかった。長春市では、黄牛11頭から38虫体が検出され、70%エタノールにて圧平固定、染色体観察用処理を施すとともに子宮内虫卵を回収し日本に持ち帰った。圧平固定虫体については、写真撮影した後、一部を切除してゲノムDNAを抽出し、残った頭部部分はカーミン染色を施して貯精嚢内の精子の有無を観察した。その結果、虫体は全て貯精嚢内に精子が全くみられないか、あるいは未熟な精原細胞と考えられる細胞が少数観察されたことから単為生殖型肝蛭であると考えられた。ゲノムDNAからPCRで増幅したITS1産物は、F. hepaticaとF. giganticaの配列を併せ持つヘテロ遺伝子型(Fh/Fg)であることが確認された。現在、これらの肝蛭虫体のミトコンドリアDNA遺伝子型について解析中で虫体間の系統解析を行っている。さらに、虫卵より艀化させたミラシジウムをヒメモノアラガイに感染させて得たF. hepaticaとF. giganticaのメタセルカリアをヤギに混合感染させ、両種の雑種形成について解析している。
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