研究課題
基盤研究(B)
トリパノソーマ原虫は人、家畜および野生動物に感染し睡眠病、ナガナ病、スーラ病などを引き起こし、多大な被害を与えている。本症は、ワクチンによる制御が困難なうえ、近年、原虫薬剤耐性株の出現によって、その被害は深刻化している。そこで原虫遺伝子多型および薬剤耐性機序解明を目的として、ザンビア共和国およびフィリピン共和国における本症の分子疫学調査を行った。さらに、媒介昆虫であるツェツェバエの吸血宿主の同定、すなわち本症のレゼルボア動物の推定のために、トリパノソーマ感染ツェツェバエ由来のDNAサンプルに含まれる哺乳類動物のミトコンドリア遺伝子を検出し、その遺伝子配列解析から吸血宿主を同定した。その結果、ヒトおよびアフリカゾウ、アフリカバッファローなどの野生動物に加え、調査地区集落の主要な家畜であるヤギの遺伝子も検出されたことから、ヤギにおける本症の分子疫学調査も行い、同地区の高率な感染率を報告した。一方、フィリピン共和国において集団流産が認められた家畜の原因病原体の調査も実施するとともに、抗原虫薬剤治療歴を持つ家畜からトリパノソーマ原虫を分離し薬剤感受性ならびに病原性解析を行った。
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