研究課題/領域番号 |
18405039
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
酒井 健夫 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (50147667)
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研究分担者 |
三浦 康男 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (20339295)
伊藤 琢也 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (20307820)
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キーワード | 狂犬病ウイルス / コウモリ / 分子疫学 / 遺伝子解析 / ブラジル |
研究概要 |
ブラジルにおいては、吸血コウモリを由来とする狂犬病ウイルスによる家畜狂犬病の被害が甚大であり、また家畜のみならずヒト狂犬病発症例から吸血コウモリ由来狂犬病ウイルスが多数分離されている。本研究は、コウモリ由来狂犬病ウイルスの感染環の解明、その起源とウイルス保有コウモリから家畜およびヒトへの伝搬様式の解明を目的とした。本年度は、家畜およびヒトから分離された狂犬病ウイルスの遺伝子解析によって吸血コウモリ由来ウイルスの感染環および伝搬経路を検討した。 ブラジル国内の9州から得られたウシの狂犬病症例から分離されたウイルス株77検体のゲノムRNAを常法によって抽出し、核蛋白遺伝子の塩基配列を決定した。得られた遺伝子配列を既知の狂犬病ウイルス分離株と比較して系統樹を作製したところ、ウシから分離された狂犬病ウイルスはほとんどが吸血コウモリ由来狂犬病ウイルスの系統に属し、さらに複数のサブ系統に区分された。これらのサブ系統は平野部では広範囲に分布したが、山脈によって区分され、また山岳部では標高によって区分される傾向であった。以上、ブラジルにおけるウシの狂犬病は、分離地域を反映した複数の狂犬病ウイルス変異株に由来しており、これらの地域分布は吸血コウモリの生態に基づく可能性が示唆された。 ブラジル北東部においては、2004年および2005年にヒトでの狂犬病被害が多数報告されているが、未調査地域であったマラニョン州において現地調査を実施した。家畜、コウモリ、イヌ、ネコおよびヒト狂犬病症例から分離されたウイルス株の遺伝子解析の結果、ヒトから分離されたウイルス株は、吸血コウモリ型とイヌ型に区分されたことから、本地域は吸血コウモリ型(森林型)狂犬病のみならず、大都市では制圧傾向にあるイヌ型(都市型)狂犬病が流行していることが明らかになった。
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