研究概要 |
ユーラシア大陸の寒冷地における土壌および土壌有機物の分布パターンを把握するために、カザフスタン共和国南東部国境近くのKetmen山塊および西シベリア・北極海沿岸のツンドラ地帯において現地調査を行った。 1)Ketmen山塊における土壌の分布バターンは、明瞭な垂直成帯性を示した。標高1,400m以下には、砂漠の景観の中にCalcisolsやGypsisolsが分布する。標高が上がるにつれて、乾燥ステップから北側斜面に森林を交えた草原、高山地帯まで景観は変化し、土壌としてはKastanozems(1,400〜1,550m)、Chemozems(1,550〜1,700m)、北側斜面のPhaeozems, Umbrisols(1,700〜2,400m)、南側斜面のChernozems, Phaeozems(同標高帯)、Umbrisols(2,400m以上)が卓越する。このような土壌分布の垂直成帯性は、山間地における降水量増加を強く示唆している。また土壌pHおよび土壌有機物蓄積量(OC30)は以下のような式で表現された。 pH(H_2O)=10.22-1.72ELEV-0.361cos(DIRECTION)r^2=0.78^<**> OC30=-46.2+72.1ELEV+13.8cos(DIRECTION)r^2=0.67^<**> すなわち表層30cm土壌中の有機炭素蓄積量は、標高が上がるにつれて、また北向き斜面において、おそらく好適な水条件を反映した一次生産量および土壌有機物投入量の増加と、温度逓減に伴う土壌有機物分解速度の抑制の双方の影響を受けて増加したものと考えられた。なお蓄積された有機物のCN比は、標高が上昇するにつれて増大する傾向を示した。 2)西シベリア北部のツンドラ地帯には、泥炭性の土壌と鉱質土壌が同程度モザイク状に存在する。このうち鉱質土壌分布地域において調査を行った結果、土壌有機物および未分解植物遺体の現存量は微地形によって規定されており、相対的な低位部で増加する傾向が見られた。 このように調査地域における土壌有機物蓄積パターンには明瞭な規則性が見られたため、標高、地形などのデータを用いてその空間分布を把握することが可能である。現在その手法を含め解折中である。
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