西ジャワ州のCitarum集水域において、上〜下流域の土壌鉱物の元素組成を蛍光X線分析法により調べ、各地形面の表層土壌鉱物(母材)の起源や各種養分含有量について調査を行った。鉱物の起源の指標となるZrとThの比は、集水域内の総ての地形面で一定であり、上流から下流にかけて表層土壌の母材が同じである事が示された。しかし、VとFe_2O_3の含有量が下流から上流にいくにつれて増加し、上流の表層土壌が強い風化作用を受けていることが示された。この結果は、下流域(低地水田)において、上流からの比較的風化程度の低い土壌粒子が経時的に供給されているためと推察された。風化によって重金属類の濃度が変化しても、Fe_2O_3と各元素の比率が維持される事が知られている(石賀)。そこで、Fe_2O_3に対する各種重金属の濃度比を調べた結果、低地水田の表層土壌中のCrやPbの値が相対的に高く、低地での人為によるこれら重金属元素の負荷が示唆された。P_2O_5の含有量は上流域で高く、中下流域で低い事が示された。西スマトラ州のSumani集水域において、上〜下流域の水田土壌特性の評価および、USLE(土壌侵食予測式)による集水域の土壌侵食状況および土地利用と受食性の関係を調査した。水田土壌特性について、上流域では塩基や可給態リン酸含有量が比較的高く、土壌が比較的若く肥沃であり、下流域では粘土含有量が高く、また中流域よりも肥沃土が高く、上中流からの物質移動による土壌の肥沃化の影響か示唆された。土壌侵食はプランテーションや侵食防止策を取らない畑地で非常に大きく、それらの地点では年間100t/haを超える侵食量が予測され、逆に水田では上部から侵食された土壌を捕捉していることが予測された。
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