研究概要 |
当研究室では、アメリカ環境保護局(EPA)の支援団体であるSouthern California Particle centerとの共同研究により、南カルフォルニア地区リバーサイドで採取した大気微小粒子成分中から1,2-ナフトキノン(1,2-NQ)の存在を明らかにした。これまでの結果より、1,2-NQはタンパク質に直接作用し、機能を変化させることが明らかとなった。よって、1,2-NQのような親電子物質が大気汚染物質として存在するならば、タンパク質と不可逆的に結合してタンパク質の機能障害を引き起こし、生体に悪影響を及ぼすことが考えられる。そこで、大気中揮発相サンプルのPTP1B活性阻害とそれに伴うシグナル伝達について検討を行った。ロサンゼルス地区リバーサイドで6日間採取し、大気中揮発相サンプル(VP1〜3)によるPTPBの活性阻害について検討を行った。その結果、PTP1B活性に対して濃度依存的な活性阻害が見られた。それぞれのIC50はVP1で0.93m3/mL、VP2で0.97m3/mL、VP3で0.70m3/mLであった。さらに、MALD1-TOF/MS分析より、1,2-NQとは異なる親電子性物質の存在も示唆された。 1,2-NQはPTP1BのCys121への結合を介して本酵素活性を阻害したことから、VPsによるPTP1Bの活性阻害におけるCys121の関与について検討を行った。その結果、VPsによるC121Sに対するPTP1Bの活性阻害は、wild-typeのPTP1Bに対する活性阻害と同様の阻害効果を示した。よって、Cys121はVPsの主要な結合部位でないことが示唆された。
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