研究概要 |
タイ王国国立がん研究所のPetcharin博士との共同で、以前にタイ王国の東北部のナコンパノムより肝内胆管がん患者と性、年齢、居住地を同じくする対照者の血液DNAを用いて胆道がんのリスクとDNAの多型との関連についてGSTT1とGSTM 1を中心とした解析を行った。今回は、同じく東北部のウボンラチャタニにおいて同様の血液サンプルを集めることが出来た。これを用いてこれまでの結果を更に確認する予定である。 タイ王国の肝吸虫(Opisthorchis vi verrini)感染が肝内胆管がんの発生に関わっていることがこれまでの疫学調査で確認されている。しかし肝吸虫の感染がどのようにして発がんに結びついているかは不明である。我々は、肝吸虫が分泌する物質に細胞増殖の促進物質があるのではないかとの仮説の元で、マウスNIH-373細胞に肝吸虫の分泌抗原がどのように細胞の遺伝子発現をきたすのか、また、この抽出液が細胞増殖効果を持っていないかを調べた。15,000遺伝子の検索の結果、239個の細胞増殖に関連する遺伝子の発現が2倍以上発現増強していた。そしてepidermal growth factor (EGF)と transforming growth factor-β (TGF-β)の下流遺伝子である.pkC, eps 8,tgfβl i4の発現が有意に上昇していた。この結果は、肝吸虫による細胞増殖促進効果は、TGF-β及びEGFシグナル伝達経路が関連していることを示唆している。
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