研究課題
ヒトを終宿主とするテニア科条虫には、有鉤条虫、無鉤条虫、タイワンテニアの3種が知られている。テニア属の条虫は、中間宿主、終宿主とも哺乳類をその宿主としており、中間宿主は終宿主から排出された虫卵を、終宿主は中間宿主内の幼虫(嚢虫)を経口摂取することにより感染する。上述の3種はそれぞれ、ブタ、ウシ、ブタを中間宿主としている。しかしこれらの中間宿主となる家畜(ブタ・ウシ)での調査は全くなされていない。これは、発展途上国における家畜の疫学調査の困難さに由来する。そこで本研究では、テニア症・嚢虫症流行地において「家畜の疫学調査」を分子遺伝学的に実施し、流行地における家畜のリスク評価を実施する。また、血液あるいは組織から宿主のDNAを抽出し、宿主の遺伝的多様性も同時に調べる。これらの調査結果とこれまで得られているヒトの疫学データから、「どのような飼育形態のリスクが高いのか」、「どんな品種のリスクが高いのか」を検討し、家畜からヒトへ、ヒトから家畜への感染ルートを明らかにする。さらに非汚染地域で入手した未感染動物を汚染地域で飼育し、定期的に採血する(現地の研究協力者に依頼)ことにより、感染動態についての情報を入手し、最終的にテニア症・嚢虫症のコントロール法を検討することを目的としている。平成19年度は、平成18年度に引きつづきタイ・カンチャナブリ州とインドネシア・バリ島で疫学調査を実施した。タイでは、ヒトからAsian Taeniaを検出し、調査地域で同種が流行していることを確認した。さらに、同調査地に飼育されているブタの採血を行い、血清診断を実施したが、ブタの嚢虫症は確認できなかった。インドネシアでは無鉤条虫の流行地で疫学調査を実施した。また、無鉤条虫の実験感染ウシ血清を用い、ウシ無鉤条虫の血清診断法の開発を試みた。
すべて 2007
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