研究概要 |
ロタウイルスワクチンは南北アメリカ大陸を中心に12カ国で2006年から定期接種に導入されている。本研究は,世界で最初に公費によるロタウイルスワクチンの定期接種に導入に踏み切ったブラジルで,ワクチンの有効性と流行株に与える影響を検証することを目的とした。ブラジル,ペルナンブーコ州都レシフェにある中核的小児病院において,5歳未満の小児下痢症患者から便検体を収集するともに,ロタウイルスワクチン接種歴をワクチンカードにより調査した。ロタウイルスの検出はELISAによった。ELISA陽性の者をロタウイルス下痢症とし,陰性の者を対照として,ワクチンの有効性を計算した。ワクチン接種の対象となった小児下痢症患者180人のうち接種歴をワクチンカードにより確認できたのは149人(83%)であった。ロタウイルスワクチンの接種者は95人であり,未接種者は54人,すなわち接種率は64%であった。ワクチンカードを保有する対象年齢児中のロタウイルス下痢症患者は9人(6%)であり,すべてワクチン未接種者であり,ワクチンの有効性は100%であった。本研究の結果は,患者背景が同様であると推定される下痢症患者を対象にロタウイルスワクチンの有効性を直接検証し,ワクチンが有効であることを確認することができた。ブラジルで使用されているロタウイルスワクチンは単価ワクチンでありながら,第3相臨床試験では高い発症予防効果が確認されている。本研究は,ワクチンが実際の場で臨床試験と同様に有効に働いていることを検証したものである。
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