東南アジア各国において患者からデングウイルスの分離を行い分子疫学解析を実施した。その結果、東南アジアでは4つの血清型のデングウイルスが依然として国境を越えて移動している現状が確認された。またベトナム、フィリピンにおいて患者末梢血球中に存在するウイルス抗原をフローサイトメトリーにより解析した結果B細胞にデングウイルスが感染している例を複数症例得た。患者血液からデングウイルスを異なる培養細胞系で分離して分子レベルで解析した結果、細胞向性のことなるウイルスが同一患者に感染していること明らかとなり、デングウイルスの多型性が分子レベルで確認された。この2つのウイルスはウイルス表面抗原であるE蛋白に1つだけアミノ酸置換が確認できた。1つのウイルスは人のB細胞に高い結合性をしめし、1つのウイルスは蚊の細胞に高い結合性をしめした。このことはデングウイルスの多型性がヒトと蚊を交互に感染して感染感染が拡大してゆく上で何らかの役割を持つことを示唆している。研究最終年度の平成20年の研究では野外のウイルスサーベイランスを継続すると同時に実験室レベルでウイルスの細胞特異性の分子基盤を明らかにする予定である。
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