研究概要 |
本研究の目的は、我々がバングラデシュで発見した新種ロタウイルスB219の遺伝子学的性状を明らかにすること、新種ロタウイルスの検出法を開発すること、成人におけるロタウイルス感染症の実態を調査し新種ロタウイルスの分布状況を明らかにすることである。 今年度、我々はB219の全遺伝子配列を決定した。その遺伝子配列は、既知のA、B、C群ロタウイルスのそれとは60%未満の一致率を示したのに対し、中国で新種のロタウイルスとして報告されたJ-19株(ADRV-Nからの組織培養分離株)とは87-94%の高い一致率が見られた。特に高い一致率が見られたのはVP7,VP6,NSP2,VP2などであり、それに対しNSP3,NSP4ではやや低い一致率であった。推定される蛋白質の長さは、B219とJ19株はほぼ同じであったが、VP4のみ、B219はJ19よりも3アミノ酸長かった。以上の知見から、B219,J-19は既知のA、B、C群とは異なる新しい群に属するロタウイルスであると考えられた。またそれらは中国とバングラデシュの間で最近伝播したのではなく、異なる地域で独立に分布していたと推定された。 新種ロタウイルスの検出を目的として、VP2,VP6遺伝子をクローニングし、組換えバキュロウイルスでの蛋白発現を試みた。その結果、これらの蛋白がインビトロで発現していることが示唆された。今後、それらの蛋白の同時発現によるウイルス中空粒子の形成を観察する予定である。 本研究に係る、成人におけるロタウイルス感染の疫学的研究は中国、インド、バングラデシュで2006年4月以降進められているが、新種ロタウイルスはまだ検出されていない。その他ミャンマー、キューバにおいても共同研究の体制が今年度整えられたので、ウイルス学的解析結果は次年度以降に得られる予定である。
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