研究課題/領域番号 |
18406021
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
川西 正祐 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (10025637)
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研究分担者 |
馬 寧 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 教授 (30263015)
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キーワード | ビルハルツ住血吸虫 / 膀胱癌 / 8-ニトログアニン / DNA損傷 / 炎症 / 感染 / バイオマーカー / 発がん |
研究概要 |
寄生虫感染症は特に発展途上国において重要な健康上の問題である。ビルハルツ住血吸虫はアフリカから中東にかけて分布し、膀胱癌をもたらす。エジプト・ルクソール市では、中間宿主であるセルカリア陽性率がほとんどゼロであるにもかかわらず、ヒトのビルハルツ住血吸虫感染率は1.7%である。この感染状況はナイル川と地域住民の生活様式に寄ることが、エジプトにおけるフィールド調査により明らかとなった。すなわち、感染源であるナイル川の水をそのまま生活用水として用いること、素足でナイル川に浸かること、が感染経路となっている。アスワンダムの建設以降、ビルハルツ住血吸虫は減少しているが、依然としてエジプトの膀胱癌患者は減少していないため、さらなる健康教育を行う必要がある。 寄生虫による発がんにおいては、慢性炎症が重要な役割を果たすと考えられる。炎症条件下では活性酸素・窒素種が生成され、8-ニトログアニンなどの変異誘発性DNA損傷塩基を生成して発がんを起こすと考えられる。また最近では癌幹細胞説が提唱されていることから、8-ニトログアニンと幹細胞マーカーOct3/4の発現を検討した。エジプトの膀胱癌・膀胱炎患者より、本年度は55例の生検・手術標本を得た。昨年度までに得た32例と併せて免疫組織染色を行ったところ、癌細胞と炎症細胞で明瞭な8-ニトログアニン生成を認めた。さらにOct3/4の発現が8-ニトログアニンの局在と一致する細胞が観察された。以上より、炎症によって幹細胞においても8-ニトログアニンが生成され、発がんに関与すると考えられる。8-ニトログアニンは感染・炎症関連発がんのリスクを評価する有用なバイオマーカーとして期待される。
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