研究課題/領域番号 |
18406022
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 海外学術 |
研究分野 |
衛生学
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研究機関 | 琉球大学 (2008) 大分大学 (2006-2007) |
研究代表者 |
青木 一雄 国立大学法人 琉球大学, 医学部, 教授 (60201282)
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研究分担者 |
三角 順一 大分大学, 医学部, 教授 (40109658)
海老根 直之 大分大学, 医学部, 助教 (30404370)
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連携研究者 |
牧野 芳大 大分大学, 医学部, 教授 (60039930)
鄭 奎城 琉球大学, 医学部, 助教 (90315466)
勝亦 百合子 琉球大学, 医学部, 助教 (00437998)
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研究期間 (年度) |
2006 – 2008
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キーワード | ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)感染 / 胃がん / 慢性萎縮性胃炎 / ドミニカ共和国 / タンザニア / 中国 / ペプシノゲン / ガストリン |
研究概要 |
はじめに ドミニカ共和国(ド国)、タンザニア、中国で上部消化管疾患に関する健康調査を実施し、ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)感染および慢性萎縮性胃炎(CAG)に関与すると考えられる因子の疫学的検討を行った。すなわち、性・年齢、人種・民族、食習慣・食生活を含めた生活習慣、生活環境、並びに上部消化管疾患関連症状や既往歴、などがH. pylori感染およびCAGの罹患、並びにH. pylori菌の病原性に関与するCagA抗体保有の有無に及ぼす影響について検討した。 対象および方法 調査対象国別の健康調査実施者数を下表に示す。 表 研究期間(2006~2008年度)における国別健康調査実施対象者数(人)[table] ドミニカ共和国、タンザニア、及び中国における地域住民および児童、生徒、学生に対して、上部消化管疾患に関する健康調査(問診アンケート調査、健康チェック(身長、体重、体脂肪率、血圧)、及び採血(10ml; 【上部消化管疾患バイオマーカー検査<ペプシノゲンI,II値、ガストリン値、H. pylori-IgG抗体の有無、CagA、及びVacA抗体の有無>に供する】)を実施し、人種・民族および地域、生活環境、並びに生活習慣とH. pylori感染や慢性萎縮性胃炎との関連について疫学的に検討を加えた。 結果 主要な調査結果を以下に示す。 1. H. pylori感染率および慢性萎縮性胃炎(CAG)有病率 (1)小児(15歳未満)調査 0~5歳においては、H. pylori感染率及び慢性萎縮性胃炎有病率にドミニカ共和国(ド国)及びタンザニアの2国間において有意な差は認められなかったが、5~10歳においては、ヘリコバクター・ピロリ感染率は、ドミニカ共和国、及びタンザニアにおいてそれぞれ45.1%、及び63.2%であり、10~15歳においては、58.4%及び75.2%であり、小児の同年齢階級におけるヘリコバクター・ピロリ感染率はタンザニアにおいて有意に高かった。同様に、慢性萎縮性胃炎も、ドミニカ共和国とタンザニア間で、5~10歳において9.1%、及び28.6%、また10~15歳において15.8%、及び24.3%とタンザニアでの慢性萎縮性胃炎の有病率が高い傾向を示した。 (2)成人(高齢者を含む)調査 ド国での追加調査(2007年度)におけるH. pylori感染率は、男性(40歳未満、40歳以上)及び女性(40歳未満、40歳以上)において、それぞれ(47.0%、68.8%)、及び(42.3%、43.8%)であり、男性においてのみ年齢階級間で有意な差が見られた。一方、同調査における慢性委縮性胃炎有病率は、男性(40歳未満、40歳以上)及び女性(40歳未満、40歳以上)において、それぞれ(8.2%、20.0%)及び(13.4%、10.0%)であり、ともに有意な差は認められなかった。一方、中国福建省の地域住民(平均年齢46.5歳)における調査において、H. pylori感染率は、長楽市では、33.0%であり、廈門市同安区では、23.9%(p<0.05)であった。また、CAG有病率は、長楽市では、7.1%、廈門市同安区では、4.9%(N.S.)であった。本研究のH. pylori感染率は、著者らが1996~1997年に中国河北省で実施した調査(H. pylori感染率;~70%)と大きく異なっており、これらの成因を、食生活、食習慣を含めた生活習慣及び生活環境より精査したが、差異の成因は明らかにすることができなかった。 2. CagA抗体陽性率 H. pylori菌の病原性の指標になるCagA抗体の測定を保存血清(タンザニア(2001年)、中国(1996年)、日本(1993年))を用いて実施した。その結果、CagA抗体陽性率は、タンザニア(2001年)においては、89.8%、及び中国(1996年)においては、54.0%、並びに日本(1993年)においては、63.8%と大きく異なっていた。 3. 慢性萎縮性胃炎に及ぼす生活習慣、生活環境、上部消化管疾患症状および既往歴、血清ガストリン値、などの寄与度 ロジスティック回帰分析を実施した結果、調査対象国(人種・民族)、年齢、H. pylori感染、及び血清ガストリン値の4因子が慢性萎縮性胃炎の罹患に関与していることが示唆された。
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