カドミウム(Cd)汚染地域住民における動脈硬化とCd暴露との関連性について検討するために、肥満度、血清脂質、HbA1cなどのリスクファクターと共に、血管病変のスクリーニングに有用な方法の一つである脈波伝播速度(PWV)を測定し、暴露指標である尿中Cdや腎障害の指標である尿中β2ミクログロブリン(MG)との関連性を検討することを目的として、タイ王国メーソット地区のCd汚染地域住民および、汚染地域には指定されていないが、日本の中ではCd負荷量が高いと考えられる、富山県黒部市在住の50歳以上の某企業従業員および退職者251名を対象として疫学調査を行った。その結果、富山県の対象者では腎障害の指標であるβ2-MGと左右のPWVの間には有意な正の相関が認められたが、メーソット地域住民では両者の関連性は認められなかった。今後さらに、年齢、血圧などの交絡因子を考慮した検討を進めていく予定である。また、また、セレン(Se)はCdとの拮抗作用が知られているだけでなく、抗酸化物質の一つに数えられ、動脈硬化との関連性が報告されている微量元素であるが、尿中Seの原子吸光法を用いた簡易測定方法を確立し、多数の尿サンプルの測定を可能にした。この方法を用いて、タイ王国Cd汚染地域住民および富山県の対象者についての測定を行った。その結果、富山県の対象者についてはβ2-MGなどの腎尿細管障害との有意な正の関連性が認められた。
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