心筋症の病因として従来コクサッキーウイルスなどのエンテロウイルスが重要であると考えられてきたが、最近の研究ではC型肝炎ウイルス(HCV)が重要な病因であることが明らかになってきた。さらに、脳性ナトリウム利尿ポリペプチド(BNP)、NT-proBNPや心筋トロポニンI、心筋トロポニンTはHCVによる心筋疾患の治療経過の判定や予後の推定に有用であることが明らかになりつつある。最近、われわれはHCV抗体陽性者についてBNP、NT-proBNP、トロポニンTを測定することにより、ECV心筋疾患が容易に診断できることを明らかにした。最近、われわれは1985〜1990年米国を中心に実施された心筋炎の免疫抑制療法臨床試験のため登録された症例を解析し、1355個中59例(4.4%)がHCV感染が陽性であることが明らかになり、米国のHCV感染陽性率1.8%と比し有意に頻度が高いことが明らかとなった。 平成18年度は、パキスタンおよび中国における肝炎ウイルス感染における心筋傷害の存在頻度をNT-proBNPの測定により検討した。まず、パキスタンのSheikh博土との共同研究により、547例のHCV感染者において、NT-proBNPを測定したところ15.5%が126pg/ml以上の高値を示し、HCV感染により高頻度に心筋傷害が存在することが示唆された。また、中国の北京大学のWang博士との共同研究において、HCV感染者217例のうち37.3%、B型肝炎ウイルス感染者339例のうち7.7%がNT-proBNPが100pg/ml以上を示した。このことからHCV感染では高頻度に高度の心筋傷害をきたすことが明らかとなり、B型肝炎ウイルス感染においては、軽度であるが心筋傷害をきたすことが明らかとなった。
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