統計量の十分性と指数型分布族という概念とそれらの問に成立する密接な関係は数理統計学における基本事項としてよく知られているが、その重要性は広く情報理論、情報幾何学、大偏差理論、統計力学などの諸分野と関わっている。本計画では、これらの概念をより広い視点から、あるいはより基礎的な視点から捉え直すことを試みる。具体的には、ユニバーサル・データ圧縮と十分統計量の関係、可逆なマルコフ写像や可逆な量子状態操作が規定する情報幾何学的構造、確率過程の成す空間、特にマルコフ連鎖の空間上の情報幾何構造、量子情報幾何学的観点に基づいた指数型分布族の量子版などの諸問題についての研究を通して、十分性と指数型分布族に関する新たな統一的知見を得ることを目指す。
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