研究概要 |
本年度は過去のソフトウェア開発プロジェクトを再現するリプレイヤに実践的な機能や要素を加えた.まず,ソフトウェアの進化にともなってシステムやソースコードの複雑さが増加する様子をマップ表現を利用して可視化する機能を加えた.これによって,モジュール間の結合度の強さの変化や論理結合の強さの変化をビジュアルで再現でき,ソフトウェアの進化を再現し理解を深めることに役立った.さらに,モジュール結合と論理結合を利用した新しいソフトウェア進化の尺度を提案した.従来の研究では,プロダクトのメトリクスであるモジュール結合度とプロセスのメトリクスである論理結合は,独立して議論されていた.それぞれのメトリクス値だけでは,API群やツールという開発するソフトウェアの種類によってメトリクス値が影響され,プロジェクト間の比較が困難であった.そこで,新しい提案尺度によって,プロダクトとプロセスの複雑さの関係を計測できた.リプレイヤのひとつの機能として新しい尺度を組み込み,ソフトウェアの複雑さの変化をプロジェクト間で比較することができた. 同時に,新しい尺度によって複雑さを計算するためには,数百のモジュール間のモジュール結合と論理結合の日変化を計算する必要があり大規模な計算量となった.そのために,リプレイヤのバックグランドで計算を実施する専用システムアーキテクチャを新しく構築した.これは,複数のコンピュータによる計算を効率よくおこなうためのシステムアーキテクチャである.このアーキテクチャは組み込みシステムへの応用も可能であり,Webアプリケーションに組込み機器を接続する3層ITアーキテクチャの提案も行った.
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