研究概要 |
平成20年度では,消費電力が低いPentiumIII27台と低消費電力CPU (PentiumM) 9台とを搭載したノード数36台の低消費電力ヘテロコンパクトクラスタシステムを構築した.また,このシステムに,筐体内ネットワークおよび筐体外ネットワークの2つのネットワークを構築した.この低消費電力ヘテロコンパクトクラスタは,計算資源を長期間有効に活用するために必要な技術である.つまり,クラスタを導入した後,長期間運用する上で問題となってくるのは,故障後の部品調達が困難になることである.入手できたとしても,性能の高いCPUよりも高価になっている場合が多く,その場合,性能の高いCPUに買い換えたほうが得策である.その場合,ヘテロクラスタになる可能性が高く,本クラスタで得られた結果などは,今後,重要になると思われる. ヘテロクラスタで,重要になるのが負荷分散方式であるが,本研究では,分子軌道計算をターゲットとして,平成19年度には,ヘテロクラスタ上での負荷分散方式を実装し,平成20年度では,その方式に対して2つの改良を実装した.1つめの改良は,動的負荷分散のデータ転送を複数ネットワークで行えるようにしたことである.平成19年度では1つのネットワーク(筐体外ネットワーク)で負荷分散を行っていたため,データパケットの衝突が生じてしまった.平成20年度では,完成した筐体内ネットワークも使用し,データ転送を行った.その結果,改良前に比べ,約10%の性能向上が得られた.もう1つの改良は,静的負荷分散において,計算プロセスの割当改善を行った.生産能力の高いノードに対しては,計算ノードを複数割り当てることにより,高性能ノードの待ち時間を低減させた.その結果,改善前に比べ,最大で28.9%の大幅な性能改善が得られた.
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