本研究の目的は、ユーザが気づかない程度の小さな遅延や遅延量の変動の影響をユーザの行動の変化として捉えて測定することにより、遅延の与える影響をより明確にすること、および人間の認知特性を利用することにより、情報・通信システム利用時に通信ネットワークの遅延のように物理的に取り除けないコミュニケーションの阻害要因がある場合でも、その影響を最小限に押さえる方法を開発することである。平成20年度は以下の事を行った。 (1)ユーザが気づかない小さな遅延が、被験者の言語行動に影響を与えることを、言語条件づけを用いた実験により示す論文を刊行した。(2)映像と音声の伝送や符号化・複合化の遅延差により生じる非同期があたえる心理的影響に関して、映像と音声が主観的に同時と感じるのは物理的同時よりも100ms程度音声が遅れている時であること、順応により同時と感じやすくなり心理的な同期補償が可能なこと、外国語の刺激では日本語の刺激と特性が異なることを示した。(3)遅延の変動の影響を、行動の変化および心理物理的手法で評価する方法を提案した。
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