研究概要 |
インターネットのトラフィックは急激に質的変化を遂げており,管理者がトラフィックを監視するだけでなく,一般利用者に対するネットワーク利用状況のわかりやすい情報提供が求められている。本研究の目的は,トラフィックを特徴づける諸データをメタファによって可視化することにより,ネットワーク利用状況に関する視覚的情報提供を行うことであり,18年度にはその第一段階として以下を実施した。 まず,ネットワークトラフィックの特徴的なパターンを外部からの刺激として認識させるため,可視化のメタファとしてセル構造オートマトンをベースとする仮想的な可塑変形物体(ハイパーオブジェクト)を定式化した。また,そのハイパーオブジェクトの形状変化の振る舞いを分析するため,可視化サーバ上にシミュレータを構築し,基礎データを収集するシミュレーション実験を行った。 ハイパーオブジェクトに与えられる刺激となるネットワークトラフィックの抽出システムとしては,ネットワーク型とホスト型の両方をシステム構築した。ネットワーク型としては,RFC3176準拠のパケットサンプリング機能を有するネットワークスイッチをキャンパスネットワークのサブネットに試験導入し,特徴あるトラフィックパターンを監視サーバ上でリアルタイムに収集・可視化することができた。一方,ホスト型のネットワーク利用監視としては,子供のインターネット利用を保護者がリモート監視する状況を具体的に想定し,パケットキャプチャ及びアクセス傾向分析モジュールをPCホスト内に開発・実装した。基礎的な評価実験の結果,利用者のプライバシーに配慮しつつ,実用上問題の無いオーバヘッドでトラフィックの特徴抽出が可能であることがわかった。
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