研究概要 |
インターネットのトラフィックは急激に質的変化を遂げており,管理者がトラフィックを監視するだけでなく,利用者に対するネットワーク状況のわかりやすい情報提供が求められている。本研究の目的は,トラフィックを特徴づける諸データをメタファによって可視化することにより,ネットワーク利用状況に関する視覚的情報提供を行うことであり,19年度には研究計画第二段階として以下を実施した。 まずトラフィックパターンの特徴認識の基本モデルを再検討し,パターン学習とクラスタリングを行うセル構造オートマトン型のモデルとして,測地ドーム上に定義された球面自己組織化マップを新たに導入した。この基本モデルに基づき,IPアドレスで識別される個々のホストをデータ点とするクラスタ(類似したトラフィックパターンを有するホストの集団)の自律形成・発現過程やその時間推移をハイパーオブジェクトの視覚的な形状変形に反映させる3次元形状モデル構築並びに実験システムの再実装を行った。 次に,この実験システムに対して実際のネットワークからホスト型手法で抽出したトラフィックデータを与え,ハイパーオブジェクトによる可視化とその評価を行った。その結果,可視化の対象ドメインのネットワークが比較的小規模(ホスト100台程度)の場合には,実用上問題のない処理時間でトラフィックパターンの可視化を行うことができた。対象ドメインのホスト台数が多い場合には,自己組織化マップによる学習時間が増大し,ハイパーオブジェクトの追従性に問題を生じる可能性があるため,整合ノード探索や対象ドメインの適応的階層化など,高速化とその実装手法についてさらに検討を加え,大規模ネットワークに対するハイパーオブジェクト適用に関する知見を得ることができた。
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