研究概要 |
本年度は、以下の2項目に重点的に行った。 1)符号化されたビデオコンテンツに対する「ビデオ品質評価モデル」の開発 S-CIELAB色空間の特徴を考慮した符号化動画像のFull Reference画質評価モデルの構築を行い,その推定精度の検討を行った,評価動画像の品質推定値を求めるにあたり,動画像をフレーム単位で見た場合の静止画像品質を求めた.その際,使用する色空間として,人間の視覚系の空間周波数特性が考慮されているS-CIELAB色空間を用いた.また,フレーム画像内の局部的な画質劣化を考慮するため,画像をブロック分割し,各ブロックに重み付けを行い,フレーム品質の推定を行った.フレーム品質統合には"Worst-samples averaging"を用いた. 次に,フレーム品質から動画像品質を推定するにあたり,評価動画像中に画質劣化などが目立ち画像品質が著しく下がった場合,評価動画像の総合品質が悪い方に引き寄せられる傾向が見られた.このことを考慮するために,"Worst samples averaging"を用い,動画像品質の推定を行った.その結果,動画像によって主観評価値と高い相関を示すパラメータにばらつきが見られた.ほとんどの動画像では55〜70%の間に相関のピークを持つが,画面内の物体の大きさや対象物の動き領域が特に少ない動画像では,パラメータが低い時ほど主観評価値との相関が高く,逆に画面全体に大きな動きが見られた場合では,パラメータが高いほど主観評価値との相関が高いという結果を得た. 2)符号化されたマルチメディア(ビデオ・オーディオ)コンテンツに対する臨場感を定量的に評価できるような「マルチメディア品質統合関数」の開発のための基礎実験 ビデオではHDTVサイズ,オーディオではまず5.1chをカバーできるような客観的なマルチメディア品質評価モデルの開発のための基礎実験として、映像と音響の伝送情報量が臨場感に及ぼす影響を調査するためにSD法を用いた主観評価実験を実施し,その結果を解析した.この際、著作権フリーなマルチメディア素材が市場にはないので,新たに7.1chオーディオマイクを購入し,既存のHDTVカメラを用いて評価素材を撮影・録音し,新規購入したノンリニア編集機により,マルチメディア評価素材を作成した.実験結果より,以下のような知見が得られた. (1)実験結果データに対して主成分分析を適用した結果,5つの主成分が得られた.(2)この5つの主成分から評価語「立体感」の評価値に対する予測値を得て,評価値を推定したところ,その重相関係数は0.91であった.(3)また主成分分析結果より,5.1chマルチサラウンドホームシアターシステムでは,映像の美しさはもとより,音響の広がりがあることや音響が豊かで澄んでいることなどが,より臨場感を感じる要因であると考えられる.
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