昨年度行った"符号化されたマルチメディアコンテンツに対する臨場感を定量的に評価できるような「マルチメディア品質統合関数」の開発のための基礎実験"により、現在のホームユース環境では、オーディオは5.1chと高品質化しているのに対し、ビデオはHDTVサイズでは不十分であり、明らかにオーディオ品質のほうがビデオ品質を上回っていることが問題として浮上してきた。しかしながら現段階では、解像度がHDTV品質以上での臨場感に関する研究は現有する実験環境下では不可能なので、以下に示す、より現実的な観点から基礎実験を重点的に行うこととした。 1)符号化されたビデオコンテンツに対する「ビデオ品質評価モデル」の再考察 ビデオ品質評価モデルをより高精度に行うために、符号化動画像の各フレームごとの主観品質がその主観総合品質に及ぼす影響の解析を行った。主観評価実験で得られた評価値を解析した結果、時間方向の品質変動を積極的に考慮しなくても、主観フレーム品質で表わされる空間方向の品質のみから、主観的な動画像品質を高精度に推定できることを明らかにした。 2)ハイビジョン映像と音響が視聴覚の相互作用に与える影響の検討 音や映像における個別の品質だけではなく、これらの相互作用による総合品質への影響を解明する必要があるので、HDTV映像と2ch音声を用いて、映像の「明るさ」の変化が主観的な総合品質に与える影響について検討した。 SD法による主観評価結果を因子分析することで、5種類の因子が抽出された。次に、これらの5因子と、明るさの関係について分散分析を行い検討した結果、「臨場感」を意味する因子が唯一、明るさの影響を受けていた。また、これら5因子すべてが、コンテンツの影響を受けていることを示した。
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