コンピュータでのオンライン手書き記号の活用環境システムを構築することを目的として、下記2つの研究を行なった。1つ目の研究は、特定筆記者のための学習用オンライン文字パターンの自動生成法に関する研究である。オンライン手書き記号識別では、識別器を構築するために膨大な量の学習パターンが必要になるのが一般的である。そこで、本研究では、同一筆記者が書いた少数の記号から、識別器の学習パターンとして利用可能な大量の類似記号を生成する手法を提案した。具体的な手法は、まず、オンライン筆記情報から、ストローク記号(一筆で描かれた筆記軌跡)を抽出し、それらのストローク記号ごとにアフィン変換による幾何学的変形を適用した後、変形したストローク記号を合成して1つの記号を生成する。これらの生成パターンを学習パターンとして用いて、識別器を構築することができる。平仮名20文字を対象として、識別実験を行なった結果、識別器の性能(認識率)を向上させることができることを確認している。2つ目の研究では、音楽知識のないユーザーでも、ペンコンピュータを用いて簡単に楽曲を作成できる作曲支援ツールの構築を行なった。具体的な手法は、まず、あらかじめ用意した楽曲データベース中からユーザーが入力した短い楽曲と似ている部分を検索し、線形回帰モデルを用い、検索曲とユーザー入力曲の間の変換係数行列を計算する。次に、検出したデータベース曲部分の前後に、上記行列を用いた変換を施し、楽曲を自動生成し、ユーザー曲の前後にそれぞれを付加する。実際に12曲の楽曲データベースを用い、上記手法により作曲を行なった結果、違和感のない曲を生成することに成功した。これらの研究は、オンライン手書き記号の活用環境システムで想定している、筆記記号の検索、同一筆記者記号の抽出、筆記記号のスタイル変換などに適用できると考えている。
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