前年度に実現したサーバサイドでのChordを基にしたP2PウェブサーバシステムとJavaScriptで記述されたクライアントサイドでの確率分散ハッシュ表による分散アクセスエージェントとから構成されるウェブコンテンツ流通システムの拡張として、サーバの観測のための通信の削減と多サーバへの同時アクセスによる通信レイテンシの隠蔽によるユーザビリティの改善を行なった。具体的には人気コンテンツの情報をベースサーバに定期的に通信することで新規クライアントに対して各サーバの負荷情報のヒントを初期値として与えることにより、よりよいサーバ負荷の見積りによるサーバ負荷の分散を実現した。 次に、各サーバでのアクセスログを統計処理したコンテンツ間の頻出遷移表(最長共通部分列群の検出)とクライアントサイドでの動的に獲得される各ユーザのアクセス履歴とのマッチングによりユーザの特定なしにユーザプロファイルに基づく精度のよい先読み手法を提案した。また大くのウェブサイトでの更新時刻に基づく時間軸でのコンテンツの並び情報を利用することにより、遷移表に表われない新しい遷移傾向の検出手法を提案した。両者の併用により、サーバに対して3倍のアクセス量でヒット率で4割近い精度の先読みを実現することを実験で確かめることができ、提案手法の有効性を示すことができた。 以上のように19年度の研究計画は順調に実現することができた。ウェブのユーザビリティを改善する研究としてはウェブページ推薦の研究はあるが、Ajaxを使ったサイトでの先読みの研究は少なく、研究の意義は大きいと思われる。
|