異文化の人々による協同作業(コラボレーション)には、言語・専門分野・世代・社会階層……といった多様性をもつ複数の軸が存在する。本研究課題では、このうちの「専門分野が異なる場合」という条件を抽出して、コラボレーション環境の要件について考察してきたが、本年度はこの考察内容を実際のツール開発に結びつけた。このツール(PaneLive)の実装は連携研究先である和歌山大学システム工学研究科の吉野孝研究室(吉野準教授、および福島拓氏)が行った。 さらに昨年度までのα版とは異なり、本年度完成したPaneLiveでは、言語の異なる人々の間の協調作業も支援するべく翻訳機能を実現した。このために、情報通信研究機構および京都大学情報学研究科社会情報学専攻による実装とサービス提供が行われている、多言語の言語資源を結びつける研究インフラである「言語グリッド」を基盤技術として利用した。 また、この多言語版PaneLiveを使って2008年6月と7月に2回のユーザ実験を行い、異なる言語を用いた協調作業の場においての当ツールによる支援内容の有効性に関する考察を行った。この実験と考察の内容は論文としてまとめた。(この論文は、査読を経て電子情報通信学会論文誌Dに掲載されることが決定し、現在発行待ち(2009年6月号予定)である。) また特に教育分野を中心に、翻訳品質を向上するために、ツールが利用できる語彙集データを補強した。これらをふまえ、今後は研究成果である改良版Pane Liveを、実用システムとして社会還元するべく公開していくことを検討している。
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